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コーヒー淹れたら旅に出よう。『北北西に曇と往け』

17歳の男がアイスランドでコーヒー飲んで車乗って探偵する漫画『北北西に曇と往け』が最高。

「そもそもアイスランドってどこだよ」って人が多いだろう。

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ここです。北欧の北西。別名は「地の果て」を意味する「ランズ・エンド」

「グリーンがあるのがアイスランド。アイスしかないのがグリーンランド」という言葉がある。

確かにアイスランドにグリーンは存在する。しかしその正体は岩の隙間を覆うコケである。風が強く冬は4時間しか日照時間がないこの土地では上に枝を伸ばしても死ぬだけだ。限られた植物のみが、大地を這うように枝を広げ岩の隙間に根を張ることが許される。

日本は世界で最も地震の多い国だ。「北米プレート」「ユーラシアプレート」「フィリピン海プレート」「太平洋プレート」がぶつかり合って形成された大地の上に我々は暮らしている。「収束帯」と呼ばれる日本は、大地が沈み行く場所だ。

対してアイスランドは拡大帯に形成されている。これは「大地が始まるところ」だ。日本の左半分を乗せるユーラシアプレート、右半分の北米プレートはこのアイスランドから始まり地球を覆っている。

拡大によって引き裂かれた大地は『Gyao』と呼ばれる。大地を引き裂いたプレートは今この瞬間も1年に数センチの歩みで、この日本での再会を夢見て途方もない旅路を進んでいる。

大地が始まるランズ・エンド。アイスランドの景色は圧倒的なスケールのモノばかりだ。

 

『北北西に曇と往け』は果てしない自然とそこで暮らす人の営みを素直に描写した作品だ。雨が降れば大地が潤う。雨はそのまま河に注ぎ込みやがて海へと還る。描かれている物語はこの上なくシンプルだ。そこに在るものを、そこに在るがままに描いている。主人公の御山慧は腹が減ったら食べるし日が暮れたら眠る。

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潔癖なまでに「自然体」で勝負する作者・入江亜季とは一体何者なのだろう。

コマの一つ一つが絵画のように緻密で繊細なタッチ。登場人物の全員が、今にも我々の世界に飛び出して呼吸を始めそうだ。極めてエネルギッシュに、そして魅力的に描かれている。かつ、描写されるアイスランドの風景はダイナミック。ごうごうと音を立てて流れ落ちる滝とその飛沫、見渡す限りの草原を吹き抜ける風の音、吹かれて靡くヒツジの柔らかい毛並み。その全てが手を伸ばせば届く距離で描写されている。入江亜季の眼には世界がこのように写っているのだろう。この人の目を通してもっと多くの世界を見てみたい、と心から思う。そういうものをきっと才能というのだろう。

『北北西に曇と往け』から目を離すな。

北北西に曇と往け 2巻 (ハルタコミックス)

北北西に曇と往け 2巻 (ハルタコミックス)

  • 作者:入江 亜季
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/03/15
  • メディア: コミック