タイトルを入力

Longer Tweets

今のうちに 最終日

目を覚ましたのは朝の六時半で、ほっと胸を撫で下ろす。昨晩はお酒を飲んですぐに眠ってしまった。一度も目覚めることのない深い眠りで、遅くも早くもない時刻に目を覚ます。パーフェクトな睡眠。

シャワーを浴びる。朝ご飯を食べる。荷物をまとめる。ベッドに寝転ぶ。

一週間お世話になった宿を引き払う。同室の白人は朝が早く、結局別れの言葉は告げられなかった。一度も会話はしなかったが、物静かでイビキもかかない彼に一言お礼が言いたかったのだが。

20キロのバックパックを背負って街を歩く。特に今更見るものもない。両肩の悲鳴が聞こえる前に、空港行きのバスに乗り込む。

航空会社の自動チェックイン機はまたしてもエラーを吐き出した。原因は不明で、その後問題なくチェックイン。最後までコイツとは相性が悪いままだった。

 

全てが終わってから改めて一ヶ月をまとめることはないので、道の上に居る今のうちに後ろを軽く振り返る。

クライストチャーチ。最初にして最長期間の滞在。一泊千円の宿に泊まり、毎日図書館に通い詰めた。

ただ、呼吸のみを生業として過ごした。

テカポ。絶景。全日トレッキングに赴き、毎夜宇宙を覗き込んだ。名も知らぬ人間と語り合った。過ごした時間は短いが、それゆえに記憶は濃密だ。

クイーンズタウン。活気と音楽に溢れる文化の港町。どこを歩いてもギターの音色が絶えなかった。桟橋で聴いた曲が耳から離れず、iTunes Storeで購入してしまった。聴くたびに思い出したい。

オークランド。無色。タバコの匂いとホームレスが立てる小銭の音が充満していた。青信号で即座にアクセルを踏まない先頭車には、すぐにクラクションが浴びせられた。近代化はいくつかの豊かさを奪うのだろう。クソみてえな街だった。

 

シドニーで三時間のトランジットを終えたら、日本の美味しいご飯はもう目と鼻のちょっと先だ。浴槽には新しいお湯を張って欲しい旨を先ほど家族にLINEした。

かれこれ一ヶ月近く旅をしていたのだが、特に不安を感じる場面はなかった。どこにいても携帯の電波は通じたし、気が向けば連絡を取ることもできた。肉体だけが遠い異国の地にあって、それ以外の全ては日本に居るのとあまり変わらない、奇妙な感覚に何度も落ちた。負けたくなかったので、ほとんど機内モードにしていた。お陰様で12GB/30日の海外対応simカードは、1/12の役目も果たせなかった。ざまあみろ。

いつか、命綱を外したい時が来ると思うので、運を磨いて日々を過ごすつもりである。

いい旅であった。